小さな企業の情報化-1

当サイトで実施してきたコンサルテーションの内容から中小企業のITをベースにした情報化を成功させるアプローチを整理してみた。企業のIT導入の責任者、実施者、予算を組む役員の方は、是非ご一読いただき、自社の情報化に役立てていただきたい。 (このページの内容は、予告なしに変更されます。) 問い合せはこちらまで


●小さな企業の情報化の現状
○経営層の能力に比例する情報化のレベル

大企業における業務のシステム化は、中小企業より進んでいるのが一般的である。ほとんどの大企業においては、情報化を推進する部門があり、ITのスタディを仕事にしている専門職もいる。(もちろん例外もあり、また情報化業務自体をアウトソーシングしている企業も増えつつある。)中小企業の中でも、ITに関係する企業の場合は、自然にITを理解し自社に導入しようとする意識が高まるため、情報化は進展する。何よりも、こうした新しい企業は、役員の年齢も若くITに対する理解度も高いのが普通である。そうした人々がIT投資を実施する阻害要因になることは少ないだろう。たとえば、コンピュータ企業やインターネットプロバイダの場合、社員はパソコンで仕事をするのが当たり前であり、それを阻害する要因はスペースや予算の不足くらいであろう。

問題となる企業は、ITを知らない経営者の一存で物事が決められる会社である。こうした企業においては、IT導入の正当化(理由付け)は難しく、ITのための予算を確保することはほとんど無理である。それでも、独占企業や大企業の下請となっている企業などは、当面必要性を感じることなく会社を運営していくことができるかもしれない。しかし、シビアな競争を余儀なくされる地域や業界においては、ITの普及と利用方法が競争に勝利するポイントになることが多いのである。ITの予算を管理する経営層(CIO)が、IT予算と企業のパフォーマンス(業績)の関係をどのように正しく理解しているかによって、IT投資額は変わる。これは、社員のスキルとモラルに影響を与え、結果的に企業の競争力は大きく変化する。今後は、いかに経営層に情報化とITの重要性を認識させるかが、不況の中での生き残りのポイントになるだろう。

○スペシャリストがいない

リエンジニアリングに代表される現代の業務改革は、ITなしでは考えられないし実現できない。IT関連企業以外の中小企業には、業務とITに精通した人材が不足している場合が多い。このため、せいぜいExcelを知っているレベルのユーザーを中心に、基幹業務の手順やプロシージャが決まってしまうことが多い。つまり、全社的に参照する情報は、アクセス制限を設定して共有サーバーに保存するとか、案件ごとの進捗状況をデータベースから把握できるようにする、といった当たり前の仕組みを検討し構築することなく、仕事のやり方が決まってしまう。経営層もITと情報化の知識がないためこれを容認してしまう。

この結果、本来の基幹業務システムや情報システムの構築が遅れ、社員のスキルに依存する人的システムができあがってしまう。この結果、必要な管理情報がタイムリーに取得できない、案件の進捗状況が全く把握できない、といった弊害が発生する。こうなってから、あるべき姿に戻すのは大変難しい。現場の事務員や営業員に全社的な観点からの情報化を押し付けてもできるわけがない。規模の小さい企業の情報化は、現場(業務)に精通する専門家とITに精通するスペシャリストがタッグチームで検討していかなければならない。そして、これを統率するリーダー(役員)は、現場もITも熟知している必要がある。

○計画性の不足

適用業務の開発からクライアントパソコンのアプリケーションソフトの選択まで、将来の拡張や移行がスムーズに行なわれるよう、その整合性を考慮して実施しなければならない。このためには、まず企業の情報化のプランを策定しなければならない。専門部隊のいない企業では、そうした企画立案を検討することなく、現場オフィスでその時見える範囲で処理しようとする。この際、共有すべきデータであるにもかかわらずその保存にデータベースを使用しなかったり、とりあえずワープロや表計算ソフトで代替しようとするなど、システム化の方向性とは全く異なるブッシュの中に迷い込んでしまう。丁度、ブッシュに隠れたゴルフボールが見つけ難く出し難いように、後で本来の業務システムに移行しようと考えても、大変分かり難く技術的にも困難な状況になる。

たとえば、Excel を使用して見積データを個別に保存し始めると、自然に見積・請求書・報告書も「切り貼り」で作成するようになる。報告書が全部集まり集計しないと売上金額はわからない。管理する側はこれでは困るので、中間報告やさまざまなマニュアル作業を要求しもっと迅速にもっと正確な数字を要求する。現場では、余計な仕事が増えることになり、本来の仕事のサービスレベルが低下するなどのデメリットも発生する。最初からデータベースに入力するようにすれば、管理側は容易に生の数字を把握できるし、現場ではデータベースからExcelに入力するツールを作れば、帳票の出力は可能である。後で、VBS(Visual Basic Script)等で本格的な業務アプリケーションを構築することになっても、構造的に大きな変化はなく移行しやすいはずである。

参考:エクセルが中小企業のIT化の足を引っ張る!?

○「ペーパーレス」の間違い

ペーパーレスを目的にITの導入を検討する企業があるが、大きな間違いを引き起こす可能性がある。確かに、印刷物や紙に書かれた情報を伝達しようとすると、コピーやファクシミリにより紙が膨大に増えてくる。伝達前の情報を最初から電子化してしまえば、電子メールやBBSを利用し、紙を排出することなく正しく情報を伝達できる。しかし、紙に記述された情報は一覧性や保存の柔軟性に勝れ、手元に置けばアクセスも速く、大変重宝である。つまり、オフィスで新聞を1部だけ取っているなら、同時に2人以上参照することはできないが、全員が1部新聞を持っていればいつでも読めるので困る事はない、ということである。電子ファイル化されていれば、パソコンの画面を通じて誰でもいつでも読める。しかし、会社に向かう電車の中で読みたい者にとっては折りたためる紙はありがたい。

すなわち、情報処理(業務の流れ)に応じて適切なメディアを使うことが重要なのであり、紙を減らすことを目的にした改革は、必ずどこかに矛盾を発生させる。「xx%削減」などという目標値を設定した改革は、業革ではなく単なるクリーンアップ(大掃除)である。情報の電子化が進行すれば、髪は自然に減ってくるのである。

○現状が見えず競争力は低下する

多額の含み資産を持つ企業や借金の少ない健全な財務状況の企業なら、長期的な不況でもある程度耐え忍ぶことができるかもしれない。しかし、情報化の遅れている企業では、上述のように、次第に担当者の能力に依存した仕事の進め方に変わっていくため、全社的な資源配分の最適化をめざす観点とは異なった業務の形態になりがちである。成長期ならともかく、このような長期的な不況の最中では、資金繰りに追われ、業務を見直しITの導入を推進していく余裕などなくなってしまうかもしれない。

情報化の進んだ企業では、必要な情報の多くはコンピュータから適時に出力されるため、その情報を基に対策を検討すればよい。しかし、情報化の遅れた企業では、判断に必要な情報を収集する(集計する)のに時間がかかり、結局対策の検討が遅れることになる。収集できない情報もあるかもしれないし、情報の精度も低下するだろう。トップマネジメントは、部下に要求した情報がなかなか入手できないことに苛立ち、「なぜこんなに時間がかかるのか」、と問いただすかもしれない。部下は、「あなたが情報化の予算をカットしたからだ。」とは言えないだろう。

この結果、より鮮度の高い情報が必要なケースほど、明らかな差が出る。たとえば、刻々と変動する株式の売買などは、利益を最大化するためには、秒単位でインプットが要求される。最新の顧客情報が蓄積されているデータベースを持たないような企業は、顧客と競合他社がインターネット経由で時期ビジネスの商談を行なっていることさえ知らないだろう。

○結局、自転車操業の継続になる

特に、基幹業務の情報化の遅れは致命的である。というのは、ITに委ねる処理の多くを営業員自らの労力を使って行なうことになるため、個人の活動が圧迫され、本来のマーケティングパワーが低下し、顧客との対面時間や交渉時間が少なくなる。こうした不利な状況でも業績を維持することができるのは、営業員としての傑出した能力のある者に限定されるだろう。

情報化の遅れは社員のモラルにも影響を与える。特に若い世代の社員は、自宅ではメールもワープロもパソコン1台で簡単にできるのに、会社の仕事は何でこんなにゴミゴミした原始的な作業が多いのか、と疑問を感じることだろう。こうした状態が長く続くと、事務処理のための残業時間が増加したり、慢性化したり、また、そうした現状を改革しようとする意欲も減退する。わかっていながら、過去の仕事のやり方を日々踏襲することになる。さらに、マンネリ化すると、自分だけしか遂行できない(代行が効かない)形に変えてしまうワーカーもでてくる。
 
●情報化を成功させるための準備
○計画を策定する

ITの進歩は目覚しく予測できない部分も多いが、分かる範囲で1年ごとの情報化計画を作る。サーバー、クライアント、ネットワークをそれぞれどのようにするのか、導入するハードウェア/ソフトウェアは何か、開発するべき適用業務はどれか、時系列にわかるように記述してみる。この過程で、情報化の遅れている業務や部門が明確になり、自然に優先度もわかってくるはずである。計画を作るということは、現場のITによる情報化が間違った方向に進まないようにするためにも不可欠である。さらに、この計画書はITの進歩を考慮して、定期的に見直され、更新されるべきである。

そして、当面実施する情報化計画を詳細にスケジュールする。重要なことは、まず移行時期を十分に検討すること、つまり業務への影響を最小化できる時期にし、そこから逆算して無理のないように段階的なスケジュールを立てることである。

○予算を確保する

パソコンの購入費用や通信費を見積るのは容易である。しかし、ソフトウェアハウスやSI開発業者が、業務システムや情報システムの開発を受注する場合には、見積価格は人的コストをベースに「リスク」を加えて計算される。初めて業務システムを外注する場合には、業者の提示する見積金額に驚かないようにして欲しい。日本の企業の経営者の多くは、こうした形のないIT投資に関しての教育を受けていないため、金額の妥当性や整合性が判断できず大変困惑するだろう。いかに改革の気運が高まっても、予算を確保せずに実施することは無理である。予算を確保するのは役員の仕事である。

IT予算を決定する責任者は、まず、期待される定性・定量的導入効果を予測し、削減・抑制できる省力化効果がどの程度なのかを確実に把握して欲しい。不安になり、決して中途半端な投資額に決まらぬようお願いしたい。めざす情報化は100%実現しないと意味がないということを理解して欲しい。たとえば、予算が削られ、当初予定した全支店のネットワーク化が不可能になった時、取り残された支店を救うためには、結果的にこれまで以上の労力が必要とされるかも知れないのである。

○プロジェクトチームと専任の担当者を割り当てる

役員と各部門の担当者を決める。役員は、担当者の権威付けを行ない、責任と権限を与える。業務とITに最も精通した者をプロジェクトリーダーとする。現状分析から外部のコンサルタントに委託しても良いが、見積書の内容を十分に理解した上で判断していただきたい。業務全体を効率化するマクロ的な視点で検討できるメンバーを中心に構成することである。新入社員や経験の浅い社員では、要件を見落としたり、自分の責任範囲の効率化ばかり主張しなかなか進展しない、といった弊害が生まれる可能性が高い。
次のような人物をプロジェクマネージャにすると、そのプロジェクトは失敗する。

 1.パソコンの苦手な人を蔑む。
 2.ディスクの整理が悪く、社外秘の書類の管理に無頓着。
 3.部下が進言しても積極的に対応しない。
 4.時間や約束を守らない。
 5.前例に基づいて方針を決め、新しいやり方を採用しない。
 6.上司のいうことに反抗せず、ただ部下に伝達するだけ。

また、本来の業務にメンバーとしての仕事を追加すると、当然多忙になるためサービスの品質は低下する。役員は、メンバーを一定期間専任として割り当てるか、それができないならば、本来の業務の一部を責任範囲から外すなどして、十分な検討時間と作業時間が確保できるように配慮すべきである。

○まず、詳細な業務マニュアルを作成する

各担当者が行なっている仕事の羅列ではなく、業務フロー、各々の処理内容と入出力データがわかる手順書(業務手続書)を作成してください。これが作成できないと、開発する側は、どの部分をサーバーでどの部分をパソコンで対応するか、またどのようなデータベースを構築すればよいか明確にできない。

また、第三者から見て理解できる業務マニュアルがないと、自社内で何が行なわれているのかが不明確になり、社内では「あの人がやっていることなので大丈夫だろう」といった間違った認識が生まれる。こうなると、外注するにしても、内製するにしても、やっている仕事を理解しあるべき姿が何なのかを明確にするだけで膨大な労力が要求される。プロの業者なら、このようなケースはリスクが高いと判断し、通常受注しないか、リスクを考慮して料金を極端に上げて提案してくる。

さらに、業務マニュアルを作成する過程で、そこに表現できないような複雑な処理や、個人のスキルにより不可能または品質が異なるような処理があれば、ピックアップし、簡素化・標準化を行なってわかりやすくするための材料とすることができる。

○現在のシステムの問題点を明らかにする

業務一覧とそれを支援する現在のシステム構成図やネットワーク構成図を作成し、情報化の現状と問題点を明確にする。この情報も、外注する場合など、第三者に理解してもらうために必ず必要になる。サーバー、ネットワーク、クライアント(パソコン)と、そこにインストールされているソフトウェア(バージョン)や接続されている周辺機器なども詳細に記述する。たとえば、パソコンにインストールされているアプリケーションに目を向けると、ワープロのバージョンひとつとっても不ぞろいが発見できるかもしれない。

さらに、稼働状況や利用状況も調査し問題点を洗いだしておこう。ファイルサーバーが設置されていても誰も使っていないとか、締めの時期には、XX部署の稼働率が極端に上がり「待ち」が発生するとか、応答時間が極端に長くなるなど...現場ではそれが当たり前であり、問題として認識していないかもしれない。

○適切な業者とのパートナーシップ

スペシャリストのいない企業においては、外部の専門家を巻き込み、最も効率的なアプローチを決めることが大切である。業務改革を主体とするなら、高額だがコンサルタントに委ねることが妥当だろう。ERPパッケージの導入や適用業務の開発が主体なら、それを得意とする業者と契約することになる。上流から下流まですべてをカバーできる業者はいないと考えた方がよい。注意しなければならないことは、業者にまかせっきりにして、後で予想外の請求額になってしまい、支払いができずに途中解約で無駄に終わってしまうことである。伝統的に、コンサルタントは、現状分析から提言までのステップまでを得意とする。その後の開発作業までは面倒をみてくれないのが普通である。中小企業においては、IT予算も制限されるため、コンサルティングのステップで予算を使い切ってしまうことのないように注意したい。

さらに、最近は、中小企業向けに特定のパッケージ(L社のNote○など)を使用することを前提としたサービスが増えてきた。このような業者の夢のような提案に対しては、まず、検討中の業務範囲がそのパッケージでどの程度無理なくカバーされるのか慎重に検討して欲しい。知らないソフトウェアを導入し、後々、更新が必要になれば、当然業者に発注することになり料金が発生する。ライセンスの使用料金は安価でもカスタマイズや開発費用がより高額になるのが普通である。ERPなども同様で、導入しただけでは使えない。必ず、カスタマイズやメンテナンスが発生する。こうした内容も考慮した提案を行い、きちんと説明してくれる業者を選択するべきである。

システムイメージ  
 
 
●情報化のステップ
○現状把握

設立当時は全貌が見渡せた小さな会社でも、徐々に業務や組織の壁が生まれてくる。気がつくとトップマネジメントは自室に引きこもりオフィスの全貌は見えなくなっている。情報化アプローチの違いにより、この差異はさらに激しくなる。ある時、現状を確認しようと情報収集を行なうと不満や要望が山ほど出現し驚いてしまう。それは、これまで社員の要望を受け付けるオープンな環境を構築してこなかった報いなのかもしれない。

まず、現状分析は、それ自体が目的ではなく、現状を把握することにより情報化のための要件を洗い出すことである。たとえば、社員へのインタビューの中から、会社に対する要望が山ほど出てくれば、それは別プロジェクトで処理するようにしよう。ここでは、あくまでITによる情報化に必要な要件を明確にするための材料を整理することに徹するべきである。

○要件設定

次に、情報化の範囲を明確にする。理想の世界は一度に構築できない。いつまでにどこまで情報化するのか、明確に分かるように範囲を決める。販売管理、在庫管理、顧客管理などのアプリケーションに置き換えてみる。影響を受ける部署はどこか、メリットを受ける人は誰か、不要になるジョブはどれか、などさまざまな観点から分析する。この段階で、統合パッケージの適用の可能性も検討してみる。アプリケーションの範囲を広げれば、効果は大きくなるが、失敗した際のリスクや痛みも大きくなる。特に、ERPパッケージを導入するなら、これまでの現場のオペレーションは根本から変わることを覚悟しなければならない。慣習に基づいて仕事を行なってきた人種には、相当のショックを与えることになる。「改革」にはそのような変化が付きまとう。

さらに、個々の業務の処理の流れと、共有すべきデータ(管理すべきデータ)を明確にする。たとえば、営業員が入力する新規の案件データ、顧客・仕入先情報などのデータベースにあらかじめ保存しておくデータなどを区別する。つまり、詳細な業務プロセスとデータベースの項目など、仕様書を作成するための材料をすべて決定し、要件書にまとめる。業務フローの中で、手作業の部分は残るかもしれないが、採番や日付入力、集計はシステム側で自動化するのが望ましい。

○システムデザイン

まず、要件書から設計書を作成する。最初から詳細設計書を作成できる場合もあるが、複雑な要件が絡み合う場合は、概要設計書を作成し、関係者の合意を得た上で、詳細設計書を作成するのが無難である。ここで作成された設計書をベースに実際のシステムが構築される。

重要なことは、この段階になって要件の不足や変更が発生した場合、それを無視しないことである。エンドユーザーの要件はダイナミックに変わるのが普通である。彼ら自身も、この段階になって、やっと自分たちの要望が明確になってきたことに気が付くだろう。

さらに、業務システム、情報システムに委ねる部分を明確にする。たとえば、「翌月初日に前月総売上が把握できる。」という要件であれば、運用規定として、個別の基礎データを業務システムに前月末日までに入力しなければならない。また、入力者のために、パソコン側の入力ウインドウとデータベースへの書き込み処理ルーチン、集計ルーチン、照会者のために、照会ウインドウとデータベースからの読み込み処理ルーチンを、各々の仕様書に記述しなければならない。もちろん、データベースの設計も必須である。

○開発&テスト

仕様が決まったら、データベースと業務アプリケーションを開発する。最近のデータベースソフトは、入力、照会、印刷など、実に簡単に行なうことができるし、サンプルやマニュアルも充実している。全てを外注せず、データベースの参照機能で対応できる程度のものは業務担当者が作成してもよいだろう。

成果物の品質は、開発者のスキルに依存する。テストの段階でさまざまな不具合が発生し、「仕様書に明記されていないから...」などと責任を回避する業者もいる。最近は開発環境やツールも整備されてきており、以前のように何から何まで開発するということは希である。レベルの高いプログラマーであれば、初めからパフォーマンスや後の拡張を考慮してコーディングを行なうだろうが、アプリケーションを知らない新人に当たると、仕様には沿っているがレスポンスも遅く、スムーズに処理できない非効率的なプログラムが納品されることになるかもしれない。実環境でのテストの段階で、こうした問題は発覚して「これじゃ遅くて公開できない!」ということになるかもしれない。

米国では、このような非効率的なプログラムをハイパフォーマンスなものに書き換える専門の業者に委ねる場合が多いが、日本の場合は、最後まで当初の業者と交渉するケースがほとんどである。必ず、開発の段階で何箇所かのチェックポイントを設定し、テストに立ち会うなどして、こちらの条件をクリアしていることを確認しよう。

○移行

対象業務がこれまでどのような手順で行なわれていようと、予定された移行期間に新しいシステムをベースにしたオペレーションに変更しなければならない。当然、仕事の手順や使用する帳票なども変わる。現場の関係者をこのオペレーションを理解し慣れてもらい、これを信頼して業務を遂行できるようになるまで、注意を怠らないようにしなければならない。

さらに、出力された情報が正しいかどうか確認しなければならない。このため、移行期間のワークロードは増加するのが普通である。また、最低1年は、不具合が発見される可能性がある。うるう年で発覚するようなケースもある。
●サマリー
情報化の遅れている、小さな企業におすすめするアプローチは次のようなものである。

○まず、基幹を作る

要望はさまざまであり、要望を言わない社員もいるかもしれない。特定のニーズに合わせて場当たり的な発想の情報化を行なってはならない。個人が自分の仕事に工夫を凝らし努力することは好ましいことであるが、それを全社的な「標準」としてはならない。「標準」はあくまで全社的な業務効率化の観点から、最も効果的な方法でなければならない。

このためには、まず、「森」全体を見ることである。「切り貼り」で帳票を作成していたら、なぜ自動的に出力されないのか、どうすればそうできるのかを考えることが重要である。一般に、ITの効果は基幹業務を支援するためのシステムにおいて、最もその効果が大きい。最初に、この領域にITを導入するべきである。

○サーバーとデータベースを使う

日本のオフィスカルチャーは、「きれいな文書」などの出力の美しさを重視する傾向がある。このため、現場のユーザーは、いかにきれいな帳票を作成するかということをまず考え、いかに正しい情報を提供するかという考えは二の次になっている可能性がある。社外向けの情報は別として、社内で使用する資料の体裁を整えるために時間を費やすのは無意味である。

共有する情報であれば、共有可能な場所(ファイルサーバーなど)に保存するのが基本である。誰かが参照するデータであればデータベースに格納するべきである。Word や Excel は、それらのデータを各ユーザーのニーズに応じた形に出力するためのソフトである。まず、データベースと Excel などのスタンドアロンアプリケーションの役割の違いを理解し、利用目的に応じた使い分けができるようにユーザーを教育しよう。

○インターネットを使う

インターネットを企業で使用する場合にはセキュリティの課題は残るが、メール、WWW などのインターネットのサービスを是非使って欲しい。というのは、自社システムの構築はそれなりに時間もかかるが、インターネットはすぐに使えて、圧倒的に情報の伝達が迅速になり、共有化が進展するからである。

また、自社 Webサイトのスペースを有効に使うと、たとえばブラウザから売上や顧客の情報を入力・照会できるシステムを安価に構築できるのである。集計や保存は自社サーバーで処理するような構成も可能である。どのような使い方が会社に利益をもたらすかは、考えていてもわからないかもしれない。現場の社員に使わせてみると必ず答えを見つけてくれるはずである。

○ITコーディネータ制度などを利用する

ITコーディネータの認定が始まり、利用可能になりつつある。ITコーディネータとは、ベンダー(IT製品/サービスを提供する会社)に寄らず、中立的な立場で導入をアドバイスしてくれるコンサルタントである。公的機関などを通じて申し込めば、既定の料金でコンサルテーションを受けることができる。また、中小企業総合事業団によるITアドバイザー派遣制度などを利用すれば、国や地方自治体から相談料の3分の2の補助が出るので、積極的に利用して欲しい。 (参照:J-Net21