バックアップ実践術

このページでは、Windows 環境でのデータのバックアップと復元のノウハウを解説します。 (このページの内容は、予告なしに変更されます。)問い合わせはこちらまで

●パソコンのバックアップとは?

○突然のトラブルへの対応

家庭で1台しかないパソコンが故障したら、現場またはドッグに持ち込んで修理するだろう。パソコンが直るまで何もできない。仕事場ではそうはいかない。仕事の流れを止めないように、手作業に切り替えたり、バックアップしてあるデータを使って他のパソコンで仕事を継続しなければならない。故障したパソコンを修理している暇などないかもしれない。

バックアップは、突然発生するトラブルへ迅速に対処するための必要条件であり、いわば「保険」のようなものである。どれだけ緻密なバックアップを行なっているかによって、仕事への影響は大きく異なり、会社に与える損失は違ってくる。しかし、会社の重要なデータを扱っているにもかかわらず、現場のパソコンのバックアップやリカバリーの方法のスタンダードを策定し実施している企業は意外に少ないようだ。しかも、担当者の意識とスキルまかせというところが多いようである。

○バックアップの条件

パソコンが故障しなければ、バックアップなど不要である。1台しかないパソコンが故障したら仕事は止まる。データをアックアップしていても、代替パソコンがなければ、すぐにリカバーを行い仕事を再会することはできない。ダウンしたパソコンがすぐに修復できるという保証はない。ドッグに持ち込むと2週間もかかるかもしれない。現場で修復するにはそれなりのスキルを持った専門家や技術員がいなければならない。彼らもハードの故障は代替部品がないと修復できない。つまり、パソコンが故障した時、すぐに仕事を再開するためには次の条件が満たされていなければならない。

1.最新の必要なデータがバックアップされている
2.他のパソコンからバックアップされたデータが使用できる

LANが構築されているオフィスでは、パソコンは複数あっても、アプリケーションとデータファイルが利用できる環境になければ意味がない。MOにバックアップしていても、代替パソコンにMOドライブの接続ポートがなければ意味がない。代替パソコンでデータファイルは復元できたが、肝心の送る相手のアドレスがわからなくなった、というケースもある。つまり、実際のバックアップは次の要件を満たさねばならない。

1.システム全体の構成を考慮して、最も実現可能度の高いバックアップ構成を組んでおく
2.業務で必要なデータは漏れなくバックアップしておく

●まず、バックアップの手順を作成する

まず、仕事の流れに応じて、バックアップするデータ・ファイルを特定する必要がある。個々の作業レベルでバックアップするファイルを決めると「漏れ」が生ずる可能性が高くなる。前述の、最後にメールする相手のメールアドレスがわからない、というのは典型的なケースである。

○まず、抽出するデータを決める

バックアップは、必要なデータファイルを保存場所とは異なるメディアにコピーしておくことである。(OSの機能でそのままコピーする場合もあり、また専用のバックアップツールで圧縮保存する場合もある。)まず、仕事の流れを把握する必要がある。小さなオフィスで、1担当者が全てまかされている場合は、その担当者の仕事に合わせた手順を作ればよいが、多くの場合、仕事は複数のワーカーにまたがるはずであり、各人がバックアップを必要とするデータはかなり異なるはずである。この見え難い部分は、次のようなワークシートを作成してみると明確になる。

業務

担当者

使用するソフト
使用するデータ
使用頻度
優先度

元ファイルの保存場所のパス

業務管理
出田作郎
(PC-003)
Access 2001
営業員マスター
月次
A
G:\Common\Sales_master.mdb
Excel 2001
売上集計表
日次
B
D:\Sales\Sales_by_month.xls
Outlook Express 5
アドレス帳
随時
B
C:\Windows\Application Data\Microsoft\Address Book\*.*
*:使用するソフトは、互換性の確認のためにバージョンまで正確に記入する。

○保存メディアと抽出・復元方法を決める

次に、これらの情報から、バックアップするための適切な保存メディアとパス、そしてタイミングを決める。そして、代替パソコンにデータを復元(リストア)する手順を決める。データの復元だけでは仕事は再開できない事が多い。代替パソコンでは、メールアカウントの設定やアプリケーションのカスタマイズなども行なう必要があるかもしれない。また、サーバーで管理されている企業レベルのデータファイルは、単にコピーすればよいというものではない。システム・適用業務全体の仕組みの中で、整合性を保持しながら、バックアップ・リストアの方法を検討しなければならない。パソコンが故障してからデータを復元して仕事を再開するまでの手順を、一通り必ずテストしてみることが重要である。

元ファイルの保存場所のパス

メディア
頻度
バックアップする場所のパス
抽出方法
復元方法
G:\Common\Sales_master.mdb
HDD
随時
G:\Common\Sales_master.mdb
RAID
自動
D:\Sales\Sales_by_month.xls
CD-RW
終了時
E:\Sales\Sales_by_month.xls
Copy
Copy
C:\Windows\Application Data\Microsoft\Address Book\*.*
CD-RW
終了時
E:\Windows\Application Data\Microsoft\Address Book\*.*
バックアップツール
バックアップツール

フォルダごと抽出した方が分かりやすいなら、フォルダの内容をリムーバルメディアにそっくりコピーするツールを使用しても良い。稼働時間が決まっている環境では、タスクスケジューラーや時間の指定ができるツールを使用すれば自動化できる。要注意は、それぞれのファイルが異なるタイミングで頻繁に更新される場合である。このような場合は、あらかじめRAID(HDDの二重化)機能を持つサーバーに保存するなどして、システムの信頼性そのものを向上させることを検討するべきである。

○最適なバックアップ・メディアは?

バックアップする機器(メディア)は、容量、アクセス速度、インタフェースによりさまざまな構成が考えられる。フロッピー、MO、CD-R/RW、HDD(IDE、SCSI、iEEE1394、USBなど)、テープ装置など、種類は豊富である。CD-RWは、書き込み(更新)回数に制限があるので頻繁に書き込みを行なうなら、あらかじめ寿命を考慮しよう。外付けであればUSB接続のデバイスが、再起動なしに認識されすぐに使用できるのでおすすめである。iEEE1394のHDDは高速なので、外付けでもストレスなく使用できるだろう。十分な容量と復元の容易性を考慮して最適なメディアを決めたい。

○漏れ易いデータ

「マイドキュメント」等のポピュラーなフォルダに保存しているファイルではなく、それぞれのアプリケーションフォルダ(c:\Program files)の中に保存されている次のようなファイルは、バックアップの対象から忘れがちであるので注意して欲しい。

1.ハガキ印刷ソフトの住所録ファイル
2.会計ソフトの専用フォルダに保存されているファイル
3.他のドライブにインストールされたプログラムやデータファイル 等

参考:バックアップツール・サンプル
●トラブル発生時の処置

○パソコンが修復できなかったら?

一口に故障といってもさまざまなケースが考えられる。HDDが損傷するなどの深刻なものから、再起動しているうちに自動修復されるもの、レジストリやマスターブートレコードの修復を必要とするものなどである。問題判別ができる専門家が現場にいれば、すぐに修復できることもあるだろうが、現実にはそうはいかない場合が多い。実際、「Scanreg /restore」を知っていれば、5分で修復できるのに、わざわざドッグに持ち込んで修理代を取られ2週間も無駄にする、ということも多いのである。(メーカーの技術員にとっては大変オイシイ。)

しかし、ここでは「パソコンはすぐに直らない」という前提で、代替パソコンを使って、最短で仕事を再開するための処置について焦点を絞ることにする。

1.HDDを取り外して内部接続する

デスクトップパソコンの場合(DOS/V規格であれば)、HDDが故障していなければ、HDDを取り外して他のパソコンのケースを開け「スレーブ」として接続することで、別ドライブとしてファイルを抽出したり書き換えができるようになる。ただし、既存のHDDの区画設定によっては、ドライブレター(D:、E:など)が変わることがあるので注意しよう。また、すでに他のIDE機器(DVD-ROM、HDDなど)が複数台接続されていて空きがなければ、起動HDD以外の1台を一時的に外して接続する必要があるだろう。その他、HDDのピンの設定、IDEケーブル/電源ケーブルの接続などについての知識が必要である。

2.HDDを取り外して外部接続する

上記の方法が面倒なら、USBに接続できるHDD増設用ケースや変換ケーブル(2000円〜1万円程度)を準備しておけば、接続するだけで簡単に新ドライブとして認識される。この方法なら、ドライブ/フォルダ/ファイルの基本知識さえあれば、1時間もかからずに仕事を再開できるだろう。 これらは、HDDが認識され保存されたデータが読める場合の処理である。ドライブは認識されるが、ファイルが読めない場合は適用できない。ファイルが含まれているのであれば、高額だが専門業者にリカバリーを依頼することになるかもしれない。また、SCSI HDDなどIDE以外のHDDを使用しているなら、代替パソコンにも同様のインタフェースが必要である。

○削除したファイルの復活

1.パソコンから削除した

Windows環境では、ドライブごとにごみ箱(RECYCLED)が設定され削除したファイルを管理する。「ごみ箱」から復活できる設定にしていれば、空にしない限り元に戻すことができる。直接削除または空にしてしまったら、ファイル復活ユーティリティがインストールされていれば復活できる可能性がある。

2.ファイルサーバーから削除した

ネットワーク上にあるファイルサーバーのファイルを、自分のパソコンのごみ箱にドラッグして削除した場合、そのファイルはごみ箱に残らないため復活することはできない。この場合、ファイル削除後その領域にまだ上書きされていないなら、復元ソフトで復活できる可能性がある。これは、削除した時点では実データの部分はまだ消去されず残っているというWindowsのファイルシステムの仕様によるものであり、必ず復活できるということではない。

参考:Norton Sytem WorksFinalData

●バックアップのポイント

○ファイルを抽出しやすい環境を作る

いくつかのバックアップ処理を手動で行なう場合は、必ず漏れが発生すると考えるべきである。慣れてきて油断したときにトラブルは発生するものである。「しまった」と思ってももう遅い。したがって、処理は極力シンプルに、まず自動化することを考える。特に、優先度の高いファイルは、確実に抽出できるようにシステム側に仕組みを作る。無駄なファイルのバックアップはしない。また、抽出しやすいようにフォルダを統一したり、ファイル名の標準化などに配慮する。業務マニュアルにバックアップ手順も追加しておこう。

○復元手順と制限を明確にする

全てのファイル完璧に復元するのは難しい。タイミングによっては、再入力しなければならないデータもあるだろう。それを理解して、トラブルの影響を限りなく小さく抑えるのが人間の知恵である。そのために、現場の担当者は、注意点や考慮事項を事前に見つけ出し手順書に記載しておくなどの工夫が欲しい。たとえば、請求書ファイルは完全に復元したが、顧客マスターには入力したばかりの顧客データが反映されていない、といった矛盾が起こるかも知れない。100%に近づけるための人的努力も不可欠である。

○ツールの使い過ぎは禁物

バックアップの目的は迅速に仕事を再開することである。さまざまなツールを使って詳細にファイルを抽出するのはよいが、復元に手間がかかり過ぎて、「XXさんじゃないとわからない」という状況になっては本来の目的は達成できない。それに、スケジュール機能がいくつも稼働していては、別のトラブルが発生する原因にもなりかねない。さらに、代替パソコン側で容易に復元できる必要がある。基本は、フォルダ/ファイルのコピーである。ユーザー側から誰でも容易に処理できる手順とツールを使おう。
 
●ネットワーク上のバックアップ

複数の事業所や支店を持つ企業では、サーバーも複数の場合が多い。こうなるとバックアップの形態は多様である。まず、どのような媒体を使うか、どのような方法でバックアップを取るか、企業のバックアップの考慮点を列挙する。

○媒体と保存場所

GB単位の保存容量が必要となるなら、外付けHDDなどの大容量メディアを使用するのが一般的である。最近では、DVDなどのポピュラーな大容量メディアも利用可能である。これらの保管媒体は、セキュリティ・ポリシーの確立された企業では金庫や施錠される機密エリアに保存されるのが普通である。金融機関など、特に高いセキュリティレベルと安全性を保持しなければならないところでは、災害やテロ対策として、本社が関東にあるなら関西支店にパックアップ、東京なら豪州にバックアップ、ということも考慮するのが当然である。情報の重要度に応じて、より安全性の高い場所を検討する必要がある。

バックアップデータの保管の場所は、前述のとおり、本来のサーバー機から物理的にできるだけ離れた場所にすることである。さらに、アウトソーシング、すなわち、セキュリティセンターを持つ専門のストレージサービス業者を利用することも検討するべきだろう。(ただし、絶対に業者を「料金」で決めてはならない。)

○仕組みの理解:ミラーリングなど

サーバーのコストがアップするが、ハードディスクを二重化する方法がある、これはハードディスクが損傷した場合の対応策としては確実である。通常、HDDとRAID装置を追加すればよい。サーバー数が多いなら、バックアップ専用のパソコンを追加するという方法もある。(サーバーの記録装置に同じデータをリアルタイムに書き込みミラーリングし、 障害発生時に、ファイルの変更内容をターゲットマシンに直ちにレプリケーションすることによりデータ損失が生じる可能性を軽減する。)

○保険の重要性

外部のストレージサービスを利用する場合は、契約する際に障害発生時の保険料と保険金について必ず確認しよう。社内システムの損害保険は、パソコン単位での障害時の保証を目的とするものと、データ損失の際の補償を目的とするものがある。後者の場合は、最近加入者が増えつつあるが、まだまだ普及途上である。基本は、損失したデータを再入力するのに必要な金額が支払われる。是非検討して欲しい。

○タイミングと方法

どのタイミングで、どこまでバックアップすればよいかは、その業務プロセスに精通するユーザーがしているはずである。随時、日次、週次、月次などさまざまのはずだが、ユーザーがどのような状態を復元したいかを基本に決定するのが当然である。データの保存容量を可能な限り少なくし、リストア時間を短縮するためには、差分のデータのみを保存するなどのテクニックを駆使して、効率的なバックアップを行う必要がある。

○リストアによる検証と人間の判断

すべて自動化できればよいが、実際には人間による判断や動作検証も必要である。リストアを行うよりも、再入力した方が確実な場合もあるかもしれない。長期間同じバックアップ方法を継続している場合は、特に要注意である。ユーザーが業務プロセスや使用するデータを勝手に変更している可能性もある。定期的にリストアによる検証を行い、より効率的なバックアップ方法を再検討するべきである。